地方で活動するWeb系フリーランスが考える、これからのWebサイトの作り方。

こんにちは。富山県でWeb系のフリーランスをやっておりますMulberryです。2023年2月現在、独立してから9年が経過しました。

近年ノーコードツールの台等で、Webサイトはデザインしなくてもコードを書かなくても簡単に作れるようになってきました。クオリティを気にしなければ、誰でも簡単にWebサイトが作れる時代になってきました。そして2023年はChatGPTに代表されるようなAIツールが話題となり、条件さえ入力すればAIがWebサイトを全て作ってくれるんじゃないか?という気さえしています。

今後地方でひっそり活動しているweb系フリーランスとして、どのように仕事を展開していけばいいのか、私の頭の中をまとめてみようと思います。

「点」で考えるのではなく「線」で考える

Webサイトを作っただけではアクセスはこない。Webサイトへの道筋も一緒に作る必要がある。

一昔前は「Webで集客する=Webサイトを作る」という考えが一般的でした。私のところにも「Webサイトを作りたい」というご相談が多く寄せられました。しかし今ではそれは通用しなくなってきたなと思っています。

それは「Webサイトは意味がない」という意味ではなく「Webサイト単体だけではやっていけない」という意味です。

SNSやポータルサイト・まとめサイトが乱立する昨今、ただWebサイトを作っただけではアクセスは来ません。多少ネームバリューがある企業であれば、企業名で検索してサイトを見にきてくれる人もいるかもしれませんが、まだまだ認知も低い企業が企業名で調べられる機会はあまりありません。企業名ではなく「提供しているサービス+地名」などで検索しても、同業他社が多い場合はGoogle検索に引っかかったとしても検索順位が低く見つけてもらえない場合があります(業種や同業他社次第ですが)。

世界中に十数億あるWebサイトの中、Webサイト単体で戦っていくには相当強いWebサイトに仕上げなくてはいけません。相当強いWebサイト、それは物理的な意味ではなく、「コンテンツが充実している」という意味です。ユーザーにとって有益になる情報が網羅されているサイト。それを作ることができればWebサイト単体でも戦っていくことができるかもしれませんが、そのサイトを構築するのにどれくらいの人員・時間・予算がかかるでしょうか。

地方で1人で活動している私としては「人員・時間・予算」が圧倒的に足りません。そして私のもとに相談に来るクライアントも個人事業主だったり小規模企業の方が多いので、同じように人員・予算・時間が足りない場合が多いのです。

このようにWebサイト単体で戦えるサイトが作れないのであれば、Webサイトの他にSNSやWeb広告、さらに新聞の折込チラシなどオフラインも含めてトータルで戦うべきです。

つまりWebサイト単体という「点」で考えるのではなく、SNSやWebサイト・Web広告などを「線」で繋ぎ、オンライン・オフラインの全てを使って売上を上げる構造を考える必要があります。

では具体的に「点」ではなく「線」で考える方法をどうすればいいのでしょうか。

Webサイト単体ではなく、SNSや広告(オフライン含む)などトータルでWeb運用を考える。

例えば漠然と「Webを使って売上を上げたい」と思ったとします。そのためには「Webサイトのお問い合わせフォームからお客様に申し込んでもらいたい」と思ったとします。その場合、どうすればいいでしょうか?

まず「Webサイトを持っている」必要がありますが、あなたの商品を申し込んでくれるお客様はそもそもWebサイトを見ていますか?

若い世代の場合、Googleで検索せずインスタなどのSNSで情報を入手することが多いです。また高齢世代の場合、Webサイト自体そもそも見ない場合が多いです。このような場合、「Webサイトを作る」という考えは正しいでしょうか。

自社のお客さま層(ターゲット)に合わせて、効率よくWebを使っていかなくてはいけません。効率よくWebを使うためには「Web戦略」を考えることが重要です。具体的にどのように戦略を考えるのか、見ていきましょう。

  1. Webを使って叶えたいゴールを決める
  2. ゴールまでの道筋を考える
  3. Web運用のルールを明確にする
  4. Webで試行錯誤を繰り返す(PDCA)

Webを使って叶えたいゴールを決める

まずは「叶えたいゴール」を決めましょう。漠然と「Webを使って売上を上げたい」と思っているかもしれませんが、売り上げの上げ方も様々です。「新規顧客を増やす」「リピーターを増やす」「商品単価を上げる」「一人当たりの平均購入額を上げる」など、いくつかのアプローチ方法があります。

もちろん全ての方法に対応したいですが、予算も人員も足りません。売上を上げるために一番効果が大きい出やすいところはどこかを考える必要があります。

そして売上の上げ方によってゴールに向けての最適な方法は違ってきます。新規顧客を増やすのであれば認知を拡大するために広告を打てばいいかもしれませんが、リピーターを増やすのであれば、既存顧客へのメリットを増やす必要があります。

このようにゴールによって効率的なやり方が違ってくるのです。そのためまずはWebを使って叶えたいゴールを明確にする必要があります。

この場合、ターゲットを明確にすることも有効です。「20代女性」と「40代男性」では趣味趣向が違います。ゴールは明確にすればするほど絞られた施策を考えることができますので、ターゲットも明確にするといいでしょう。

ゴールまでの道筋を考える

「自社サービスを知ってもらって新規顧客にサービスを申し込んでもらう」をゴールだと仮定します。この場合、ゴールを達成するために「どうやって申し込んでもらうか」を考える必要があります。

例えば下記のような手段が考えられると思います。

  1. Webサイトの問い合わせフォームから申し込んでもらう
  2. 各種SNSのメッセージから申し込んでもらう
  3. 来店して申し込んでもらう
  4. 電話で申し込んでもらう

上記のように、いくつか手段が考えられます。さらにここから「その行動をとってもらうためにはどのような施策をすれば良いか」を考える必要があります。

  1. Webサイトの問い合わせフォームから申し込んでもらう

    Google検索からの流入を増やすためブログ記事を更新する(長期目線)
    Webサイトのアクセスを増やすためにWeb広告を出す(短期目線)
  2. 各種SNSのメッセージから申し込んでもらう

    SNSのフォロワー数を増やすためにSNS投稿に力を入れる(長期目線)
    SNS広告を出す(短期目線)
  3. 来店して申し込んでもらう

    お店の前に目立つ看板を設置する・タウン誌に広告を掲載する
  4. 電話で申し込んでもらう

    新聞折込広告を出す

上記は施策の一例ですが、例えば高齢層のお客様の場合「SNSやWebはしない可能性があるので、新聞の折込チラシを見て電話してくるんじゃないか」とか若年層のお客様の場合「インスタに広告を掲載したら見てくれるんじゃないか」など、様々なパターンを予測して施策に移す必要があります。

SNSだけで完結できそうであれば、Webサイトは作らずSNSに全神経を注ぐのもありです。よく考えた結果、Webは使わずチラシや看板などのオフラインの施策でやってみるのもありです。自社のお客さま層や予算、目標を達成したい期日などトータルで考えてゴールまでの道筋を考えてみましょう。

地方の場合は人と人のつながりが強い場合も多いので「知人のお店にショップカードを置かせてもらう」という方法も効果がありそうですね。

Web運用のルールを明確にする

ゴールまでの道筋を明確にすると同時に、Webの運用ルールを決める必要があります。

「20代女性に来てもらいたいからインスタでおしゃれな写真を投稿して自社SNSのフォロワーを増やしてみよう」と決めたとすると、それを誰がいつどのタイミングで更新するかを決める必要があります。

Web運用は成果が出るまで時間がかかる場合があります。ブログやSNSの記事投稿で認知を広げていく場合、定期的に記事を投稿してサイトやSNSを成長させていく必要があります。ここで大事なのが「誰がいつどんな内容を更新するか」です。1人でやっている場合は必然とオーナーが更新することになりますが、企業など複数人スタッフがいる場合、誰が更新するかを決めておかないと誰も更新しないということになりかねません。また「週に◯回更新する」なども決めておかないと、だんだん更新しなくなってしまいます。

更新する内容のテーマもある程度決めておかないと何を更新すればいいのかわからず、ネタが切れてしまったり、内容に統一感のないSNSやサイトになりがちです。

そのため「誰がいつどんな内容を更新する」かはしっかりと決めておきましょう。もし社内で更新する人がいない場合、外部の専門家に頼むという選択肢もあります。

運用のルールを決めるために自分たちのリソースを洗い出す必要がある

これはクライアント側である企業や個人商店および、サポート側である制作者ともに言えることです。「Web運用に関して、月々どれくらいの時間や予算を割けるか」をしっかり知る必要があります。

Web運用はこれからしばらくずっと続けていくことになります。最初だけ頑張ってだんだん更新などができなくなるという状況は避けなくてはいけません。Web運用に関しては月々10時間くらいしか時間を取ることができないのであれば、月10時間で運用し続けていける内容で考えるべきです。

Webで試行錯誤を繰り返す(PDCA)

ゴールまでの道筋を考えて早速実行してみてもうまくいかない場合があります。それもそのはず、あくまで道筋は「予測」だからです。その道筋でうまくいくんじゃないかと仮定して行った施策であり、うまくいくという保証はありません。

自分達が考えた道筋で結果が出ているかどうかは必ず検証する必要があります。例えばサイトにアクセスはあるけど問い合わせがない場合、サイト内の問い合わせフォームまでの動線や問い合わせフォームの見直しなども考えられます。またSNSのフォロワー数は多いのに、そこから問い合わせがない場合、SNSから問い合わせをもらえるような新たな施策を考える必要があります。

アクセス解析や各種SNSのアクセス情報などをみて、どうすればいいかを考え、それに合わせて運用ルールなどを少しずつ変更しながら試してみましょう。

小規模企業・個人商店はどのようにWeb運用をしていくべきか

これからのWebサイト運用について長々と書きましたが、これらを実際に人員も予算もない企業がどのように行っていくべきか。そして私のようなWeb系フリーランスはどのように関わっていくべきかについてまとめてみたいと思います。

  1. できる範囲内で始めてみる
  2. 更新しやすい状況を作り自分たちで更新できるようにする
  3. 優先事項を明確にし柔軟に臨機応変に対応
  4. 失敗してもいいのでとりあえず試してみる

できる範囲内で始めてみる

Web運用は長期間に渡ります。最初からあまり大きな設計図を書いてもそれを持続できない可能性があります。自社のリソースをしっかり把握して、できる範囲内から始めていくのが良いと思います。

更新しやすい状況を作りクライアント側で更新できるようにする

長く続けていくためにはクライアント自ら更新できることが不可欠です。そして私たち制作者はクライアントだけでも運用していけるようにWeb運用を設計していく必要があると思っています。

サイトを制作するのであれば「更新しやすいサイト」を意識して作るべきです。更新するたびに制作者に頼まなければいけないサイトだと、どうしても更新スピードが落ちてしまいます。また更新するたびに費用が発生してしまうような契約の場合、費用面がネックとなり更新が滞る場合も考えられますので「いかに更新しやすいサイトにするか」は重要な要素です。

例えばWPのブロックエディタで簡単にページの項目追加や画像の差し替えができたり、ノーコードツールを使ってページ追加などもお客様の方ですることができるなど。私たち制作者も「更新しやすいサイト」の作り方を覚えていく必要があると思っています。

またサイトを更新するためにはちょっとしたバナー画像を作成する必要なんかもありますので、例えば「Canva」の使い方を教えるとか、そういうサポートもしてみるのいいかなと思います。

クライアント側は外部業者に任せっぱなしだと、自社のスタッフが育ちません。Web運用の知識や経験・ノウハウは立派な自社の資産になります。この資産は実際に自社スタッフが参加をして得ていくものになりますので、クライアント自身で運用していくことは必須であると思っています。

優先事項を明確にし柔軟に臨機応変に対応

予算や人員が不足している小規模企業は出来ることが限られてきます。やりたい事がたくさんあってもできない場合も多いです。

そのため、Web戦略を考える際に「優先事項」を決めることは重要です。Webサイトを作った方がいいと思うんだけど、でも予算がない。そんな場合は予算内でできる施策を考えましょう。また予算がないけどどうしてもWebサイトが必要な場合はWebサイトはオリジナルデザインではなくテンプレートを使って構築工数を省く・問い合わせフォームはGoogleフォームにする、など手間が少ない手段を考えてみましょう。

臨機応変に、柔軟に対応するためには、制作者側は常に最新のWebツールなどの情報にアンテナを張っておき、様々な提案ができるよう準備しておく必要があります。

失敗してもいいのでとりあえず試してみる

Web設計図はあくまで「仮定」で成り立っています。その設計図は必ずしも結果が出る設計図だとは限らないのです。ですので、失敗してみてもいいのでとりあえず試してみることが重要です。成果が出なかった場合、「この方法では成果が出なかった」という結果がわかります。そのような結果を積み重ねていき、より成果を出せる施策を見つけていきましょう。


ちなみにこれらの考え方はウェブ解析士協会でも学べます。興味がある方はぜひ下記のリンクより確認ください。

ウェブ解析士協会公式サイト